山間部での訪問看護、その難しさとは

豊田市の山間部、旭地区。
病院や通所施設はありませんが、緑豊かで美しいこの地区には訪問看護ステーションが一件あります。
それが、訪問看護ステーション「かえるの家」さんです。
山間部での訪問看護という挑戦。
在宅医療・介護に携わるひとなら、難しい挑戦である事がすぐにわかると思います。
介護・医療サービスが潤っている都市部でさえ、難しい訪問看護運営。
地域に今まで無かった医療サービスを受け入れてもらい、定着させるというのは大変な苦労のはずです。
どんな思いで、どのように、訪問看護運営に取り組んでいるんだろう?
そんな疑問を胸に、今回は「かえるの家」さんへお邪魔してきました!
山間部や離島などでの訪問看護に興味のある方には、読み応えのある記事になっています。
ぜひ最後までご覧ください。
山間部の訪問看護ステーション、かえるの家さんへ見学に

豊田市の市街地から山道を車で50分ほど進んだ場所に訪問看護ステーション「かえるの家」さんはあります。
市街地から車を走らせる事20分。住宅地も越え、あたりはすっかり緑豊かな山道となっています。
私が訪問した時期は6月上旬、初夏の山は空気も景観も美しくとても心地良かったです。

都会では見かけない光景ですね。
長時間の運転を覚悟してましたが、とにかく景観が美しいため退屈しません。
運転しているとあっという間に旭地区に到着しました。そこから5kmほど山の中へ進んだ頃でしょうか?
見つけました。『つくラッセル』の看板。
小高い坂を車で登っていくと、そこには懐かしい光景が広がっていました。
旧校舎を再利用!訪問看護ステーションかえるの家に到着。

『つくラッセル』

懐かしさを感じる佇まいです。
廃校となった小学校を改築したとの事ですが、現役の学校と言っても違和感のない雰囲気が漂っています。
小さな靴箱や、背の低い手洗い場、卒業制作の記念品などはそのままに残されており、かつての懐かしさを存分に感じることのできる施設です。
昔の教室を再利用した事務所

あまりにも校舎そのままでしたので「本当に事務所あるのかな?」と少し不安になりながら3階まで上がっていくと…。
ありました。かえるの家さんの看板です。

かえるの家、経営者夫婦のお二人と初対面
緊張しながら事務所の扉を開けると、取締役代表のてんころ屋さん(@yDA5XeO6bYwotdu)がお出迎えしてくれました。1歳の娘さんと、スタッフさんもご一緒です。ほどなくしてステーション管理者の旦那様(@toyota_frog01)も訪問からご帰還。
「遠いところからよくお越しくださいましたー。会えて嬉しいです」と笑顔のお二人。
お忙しい中にもかかわらず、アットホームな雰囲気で出迎えてくださいました。
その後は校長室を改造した喫茶スペースで、アイスコーヒーをご馳走になりながらゆっくりとお話をうかがいました。
山間部で訪問看護を立ち上げた「理由」や「思い」とは

喫茶店をリノベーションしたおしゃれな喫茶スペース-縁-で話を伺いました

想像していたよりも山奥で驚きました。旭地域に住まれているとの事でしたが、こちらがご夫婦の地元なのでしょうか?



いえ、旭地区は私のおばあちゃんの地元なんです。私の実家はもう少し知多半島のほうにありまして、孫リターンという形でこちらに引っ越してきました。



おばあさまの地元との事ですが、住み慣れた土地を離れての開業。不安はなかったのでしょうか?



うーん。準備をするうちに、なんとかなるのかなって思ってました。というのも、開業に向けて資料を集めたり、周辺の社会資源(病院・福祉施設)を確認していくうちに、この山間部に訪問看護の需要があるというのが確信できたからです。
それにはなから長期決戦を見込んでますので!ゆっくり地域に溶け込んでいければいいなと思ってます。



素敵な場所ですよね。なぜここで開業しようと思ったのですか?



旭地区以外にもこの周囲には無医地域があります。訪問看護を使ってもらえれば、きっと住み慣れた家で暮らせる方を増やせるはず。そんな思いもあり、思い描いたサービスの提供ができるよう、自分達で訪問看護ステーションを開く事を決めました。





今まで訪問看護の無かった地域へのサービス提供。在宅療養の可能性が広がりそうですね。利用者さんからはどんな反応がありましたか?



そうですね。
医療・介護サービスを必要とする方は多いのですが、旭地区の近くには介護事業所の数が少ないのが現状です。
中には1時間をかけて通所サービスに通われている方もいらっしゃいます。
通所施設への移動時間で体調を崩されてしまう方もいらっしゃいます。そのような方にモニタリングやリハビリのケアを提供しています。
自宅でケアが受けられることに「安心する」「ありがたい」との言葉もいただいてます。



良い連鎖が生まれてますね!地域の方からは反応はありますか?



商工会の方には「唯一無二の存在だから頑張ってください」と言っていただきうれしかったですね。地域にも必要とされてるんだ、という実感を持っってます。



山間部でケアを届けるにあたって、大切にしている事は何ですか?



介護予防に力を入れています。
この地域には高齢者のみの世帯の方が多くみえます。一度調子を崩して筋力が低下すると、自宅での生活が難しくなってしまう場合も多いです。
施設やショートステイなどを利用され、自宅を離れざるを得ない方もいらっしゃいます。そのような事を防ぐためにも、状態の悪化を予測し、早期にケアを行う事が重要なんです。
私たちが関わる事で、健康寿命の底上げができるようにしていきたいですね。今後も、より長く元気に過ごせるようなお手伝いをしていきたいと考えてます。





働き手の確保など、市街地での運営より大変なことはたくさんありそうですよね。実際にはどうだったのでしょうか?



そうですね。応募は正直集まりにくかったです。応募があっても、豊田市の市街地方面で働いているような看護師さんで、通勤時間の兼ね合いで泣く泣く断念するという事もありました。
しかし今は紆余曲折の上に、同期で友人の看護師が入職してくれました。年齢も同い年で、チームで円滑に協力しながら動けてます。



求人は難しくても、今は最高のメンバーで働けているんですね。職場作りで気をつけていることなどはありますか?



働きやすさを大切にしています!
従業員の方には家族との時間も大事にしてもらえるように、早上がりや有給もうまく活用しながら、柔軟に働くことができるように気を付けています。





この地域ならではの、壁や今後の課題などはありますか?



今まで訪問看護ステーションそのものが無い場所だったので、なかなかお声かけいただけないという難しさはありました。居宅さんや社協さんとしても、今まで連携のなかったサービスを使うというのは、難しさがあるのだと思います。



訪問看護で出来る事。幅が広いが故に、説明が難しいですよね。



そうなんです。ただそこは想定済みで、ゆっくり地域に溶け込んでいければ良いな〜と思ってます。先ほど話したように地域の方から暖かい声をいただくこともあります。実際に利用者さんの数も少しずつ増えてきています。「焦ることはない」そう思いながら運営しています。



長期的な視点で、地域に馴染む訪問看護ステーションを目指されてるんですね…。
これからの目標はなんでしょうか?



地域に溶け込み、自宅での生活を支える一助になれればと思ってます。私たちがいる事で「住み慣れたお家で過ごすという選択肢」を、選んでくれる方が増えたらとても嬉しいですね。
これからも地域の困り事や、利用者さんに寄り添って「山奥でも家に帰る事が出来る」という事を示していきたいです。
「どこいても自分らしく生きられる未来」は一人一人の挑戦から始まる。
国は「時々病院、ほとんど在宅」の方針をとっています。しかし、それは受け皿になる社会資源があってこそです。
今後確実に離島や山間地区など、無医地区は増えていきます。果たしてその時、そこに住む高齢者の方達の生活は守られ続けるでしょうか?
真の意味で地域を守るというのは、そこに住む人の生活や健康を守る存在が不可欠です。かえるの家さんのような山間地区訪問看護ステーションは、まさに地域社会に必要な存在だと思います。
同じ看護師としてお二人の決断を深く尊敬すると共に、今後の活動も応援して行きたいと感じました。
かえるの家さんに関心がある方は以下のリンクをチェック!
今回私が伝えた魅力は、ほんの一部にすぎません。
この記事を読んで「私もかえるの家さんに行ってみたい」「興味がある」「応援したい」と感じた人は下のリンクから、かえるの家さん経営者のお二人をフォローを是非ともお願いいたします!
とても優しく誠実な二人です。是非コンタクトをとってみてくださいね。